ふつー会社員が有栖川帝統と出会うまで②

続き。

部長「あなた、可愛いからってミスが許されると思わないことね」
奈々「す、すみません💦」

会社で叱られ、ぐったりして帰宅。え……テレビが壊れてる😢燃え尽き症候群手前のもメンタルの『もや』も発動。

帰ってから洗濯物を片付けたり、自分のことで精いっぱい。あ、ゴミも出さないと。

 

???「う"~~」

 

 

奈々(え、いま何か聞こえたよね?)

 

「う"~~腹が……」

「腹が……だ、誰か……」

奈々「あわわ、人が倒れてる!?」

奈々「大丈夫ですか!?」

奈々「うう、男の人って重たい~~!!」

奈々「よいっしょっと」仰向けにして息を確認する。心配してラッキーも来た。

奈々「息はしてるみたい。とりあえず救急に電話しないと……」

???「で、電話はすんな……いいから水くれ……」

男性に水を与えるとようやく起き上がることができて、一安心する。

???「ふー、助かった」
奈々「よ、よかった……何かお困りごとですか?」

帝統「俺は有栖川 帝統。賭場でスッちまって昨日から何も食ってねぇんだ」

帝統「運の尽きかと思ったゼ。サンキューなオネーサン」いきなり奈々を口説いてくる帝統。

奈々(オネーサンって、有栖川さんは何歳なんだろう)

そんなことだから彼の第一印象は『いい加減』。

飼い猫のラッキーにも噛みつかれ……と思ったら懐いてた。たぶん『悪い人』ではなさそう?彼を見ていると、飼い猫のラッキーが野良猫だった頃、ボロボロになっていたのを手当したことを思い出す。

奈々「あの……家、近いのでよかったらご飯を食べてください」

 

帝統「は?マジでいいのか!?このチャンスを逃すにはいかねぇ!!」

帝統「お邪魔しまーーーす!!久しぶりに寒さも雨もしのげる、屋根つき!!」

帝統「ところでオネーサンの名前はなんって言うんだ?」
奈々「葵 奈々(なな)です」

帝統「まさか、飼い猫と奈々で『ラッキーセブン』か!スゲーな、おい!俺は幸運だぜ」
奈々(???)

帝統「お礼にハグしかできねぇけどよ、ホラ」
奈々「きゃぁ!?あ、あのお風呂に入ってきてもらえますか!!」

帝統「そんな臭せーのか、俺」
奈々「い、一応、倒れていたので汚れを払ったほうがよいかと。お風呂を貸しますので」

シャワーを浴びて小綺麗になった彼は、私が作った料理をかきこむように食べた。大食いの飼い猫、ラッキーにそっくりで思わず小さい笑いが漏れてしまった。

帝統「ん、顔に何かついてるか?」
奈々「よく食べるなーって」

帝統「うめぇからな」

髪は藍色でウルフカット。服装はモッズコートに褐色の肌。黒髪でスーツばかりの周囲にはいないタイプでまじまじと観察してしまう。怖いというよりかは、その整った顔をくしゃりと崩して愛嬌たっぷりに笑うところが魅力的に思える、20歳の青年そのまま。

お腹も膨らんで満足したのか、また帝統に口説かれる(褒められる)。

お皿を洗いながら彼に提案をする。「もう遅いし、よかったら今日だけでも泊まっていっていいよ。ソファでよければ」

帝統「いいのか!?やったぜ!」
飼い猫のラッキー、いつも噛みつくけど、他所の人にこんなに近づくのは珍しい。

奈々「私は残業しなきゃいけなくて、気にしないで先に横になってください」
帝統「へーアンタ、会社員なのか」

奈々「そう、毎日毎日ロボットのように同じことの繰り返し。でも……」
帝統「でも?」
奈々「今日は有栖川くんのおかげで、いつもと違うことが起きて面白かった。ありがとう」
帝統「あ?俺のことか!いいってことよ。あと帝統って呼んでくれ」

本来、私がお礼を言われる立場なのに、気が付いたら帝統くんにお礼を言っていた。

翌朝、彼は出勤する私に合わせて家を出る。

帝統「世話になったな!サンキュー!」
奈々「どういたしまして」

またね、が適切な挨拶なのかはわからなくてそのままお別れする。

明るい彼に触発されたのか人と関わることや助けることは好きかも、と再認識する奈々。

 

奈々(帝統くん、無事に帰れたのかな?でも、どこに帰るんだろう?)

奈々(ご飯は食べてるのかな、お風呂に入ってるかな……)

続く(?)